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【記事】変化を受け入れながら進化してきた作品「あゆみ」― 端田新菜×石倉来輝×小山薫子×金田八愛子 座談会

Update 2022年11月01日

 2008年に初演された「あゆみ」は、人生の長さを歩いた距離に重ねながら1つの役を複数の俳優が演じ繋いでいく作品で、これまでにさまざまなバージョンが誕生した。今回、瀬戸内国際芸術祭2022で上演されるのは、2020年に初演された4人の俳優が演じる最新バージョン。小豆島出身の俳優・金田八愛子を迎え、小豆島で上演される「あゆみ」について、稽古中の4人がそれぞれの思いを語った。

インタビュー・文=凛

瀬戸内国際芸術祭2022『あゆみ(短編)』公演詳細はこちら


変化し続ける作品「あゆみ」

──「あゆみ」はこれまでもさまざまなバージョンで上演されてきた作品です。端田さんは2008年に上演されたtoi presents 3rdの長編「あゆみ」、2020年に誕生した4人版の短編「あゆみ」にも出演しています。

端田 「あゆみ」は2008年2月に、日本劇作家協会東海支部プロデュースの「劇王V」で、俳優3人が出演する短編作品として誕生しました。それは3人の俳優がひたすら歩行しながら役をつないで物語を進行させるというものだったのですが、それの長編バージョンとして、同じ年の6月、俳優10人が出演する長編「あゆみ」が生まれたんです。長編は短編とストーリーが違って、1人の女性の一生を俳優たちが演じつなげていくというものでしたね。さらにその後、柴さんも参加していたtoiというユニットの短編集「四色の色鉛筆があれば」で上演されたり、愛知県の女性俳優を中心にした8人バージョンの「あゆみ」が8都市ツアーを行ったりと、さまざまな場所で上演されるようになりました。また、青森県の高校の演劇部顧問でもある劇作家・演出家の畑澤聖悟さん(渡辺源四郎商店)が、2010年に高校演劇作品として上演してくださったことをきっかけに、長編「あゆみ」は高校演劇でも頻繁に上演されたり、劇団青年座や、演劇集団キャラメルボックスの山本沙羅さんによる果報プロデュースでも上演されたりと、現在もさまざまなプロダクションで上演されています。

──小豆島との関係で言うと、2014年に劇団サラダボールの西村和宏さん演出で、島民演劇として長編「あゆみ」を上演していますね。なお今回の瀬戸内国際芸術祭で上演されるのは短編「あゆみ」で、こちらは2020年に三重で初演され、今年新潟でも上演された4人で演じる最新バージョンです。「あゆみ」は1人の登場人物を複数の俳優が演じつないでいくという特殊な構造の作品となっていますが、俳優の皆さんにとって普段の作品との意識の違いや稽古の難しさを感じる部分はありますか?

石倉 そもそも、劇団員として関わることと客演として関わることには大きく立場の違いがありますから、当然あります。僕は2018年にままごとの劇団員になって、入ってすぐにやったのは「芝生男女」という作品でした。それは柴さんがテキストのみを書いてダンサー・振付家の康本雅子さんに演出を依頼するという、ままごとの作品としては少し特殊な形態のものでした。その次にやった「タワー」という作品もまた、これまでのつくり方を考え直すことを主眼に置いた、劇団にとってチャレンジングな作品で。だから、これまでのままごとの作り方というのを、僕は経験したことがなかったんです。でも短編「あゆみ」は、ままごとのレパートリーとして印象の強い作品なので、劇団で2020年に“4人「あゆみ」” を創作すると決まったときは、いよいよままごとのこれまでの作り方を経験できることへの期待がありました。ただ、やっぱり今回も「タワー」や最近のワークショップでの経験を引き継いだやり方で創作をしています。それは、問いをみんなで囲んで、上演の方法を探していくというもので、ままごとにとって最新の態度です。これまでの時間を共有できているから辿り着いた今の作り方にも面白みを感じていますし、今後それは更新されていく可能性がある、というのも、例えば客演として他劇団に参加するときには難しいことだし、面白いことです。

小山 私も石倉さんと同じ2018年にままごとの劇団員になったのですが、私は「芝生男女」に出演する前、劇団員ではない立場で「ツアー」という作品に出演しています。ただ新作だったので、初演時は自分のセリフや演技をどうするかに集中してしまって。その後、上演を重ねる中でもう少し戯曲をどう解釈するかってことをみんなで考えられるようになってきたんですね。今回の「あゆみ」はその感覚に近いんじゃないかなと。すでにある作品にさまざまな新しい要素が入ってきて、作品を捉え直すというか。今回は金田さんが参加してくださったり、小豆島の体育館での上演だったりと新しい要素が加わり、三重公演とも新潟公演とも違うものになってきたと思います。

──2008年頃に比べ、柴さんの作り方も変化しているのではないかと思いますが、初期から「あゆみ」に出演している端田さんは、柴さんの演出の変化を感じるところはありますか?

端田 そうですね。これまで私は、俳優が演出家に判断や責任について依存するような現場に長くいて、自分は素材としての提供だけをして判断や責任を負わないという作り方をしてきました。例えて言うなら、柴さんは鍋奉行で、鶏肉の私は切られ方も調理のされ方も鍋奉行にお任せというか。でも今は、もちろん柴さんが鍋奉行ではあるんだけど、鶏肉自身が自分がどうなるかを考え、素材としての新しい生き方を模索していくような感覚です。演出家が1人で決めて指示していく方法は効率がいいのだろうと思いますが、最近の柴さんの、「待つ」とか「聞く」ということにカロリーを使う創作方法は、私はすごく可能性を感じているし、楽しいです。

石倉 その言い方に倣えば、 “4人「あゆみ」” は、空の鍋をみんなで囲って、これは何の鍋なのか、具材は何が必要なのか話をするところから始まっていくような感じでしたよね(笑)? そうやってあゆみと未紀と、女(未紀が大人になった存在)とで配役を分けようとなったというか。

小山 わかる(笑)! あと今回、稽古中にディスカッションすることが増えてきたと思いませんか?

石倉 ディスカッション自体は前から多かったような気もするけど……。

端田 でも最初は確かに、ディスカッションする余裕もなかったですね。

小豆島出身・金田さんの参加で変化すること

──金田さんは、今回の瀬戸内国際芸術祭に向けてままごとが行なった、「あゆみ」出演者募集に応募してくださいました。応募条件の「小豆島、もしくはその他の瀬戸内海の島出身の方」をクリアした小豆島出身の金田さんですが、オーディションについてはどうやって知ったのですか?

金田 Twitterで知りました。Twitterの「おすすめ」欄に出てきて。

端田・石倉・小山 すごい(笑)!

金田 で、即応募しようと思いました(笑)。

──実は金田さんは、2015年に小豆島で行われた「わが星」も観ているそうですね。

端田 何をきっかけに観ようと思ったんですか?

金田 正直にお話ししますと、スペシャルゲストにいとうせいこうさんのお名前を発見して、いとうせいこうさん見たさに(笑)。島ではあまり芸能人って見られないので。

──そのとき観たままごとと、今回の出演者募集はすぐにつながりましたか?

金田 はい。ままごとの公式サイトを見て「ああ、あのときの人たちだな」って思いました。

──俳優になりたいという思いは以前から持っていたんですか?

金田 中学1年生のときから思っていました。私が通っていた小学校では、毎年1回、クラスごとに劇をやるという行事があって、それが楽しかったというのが原体験です。

端田 どんな劇をやっていたんですか?

金田 1年生のときは「舌切りすずめ」で意地悪おばあさんをやりました(笑)。その後も毎年いろいろな役をやったんですが、4・5年生の頃には学校の演劇クラブに入って、1年に1回、高松の人権集会で人権劇を発表しました。ただ中学・高校時代は学校にそういった部活もなく特に活動をしていなくて。高校を卒業するときに、「やっぱり俳優をやりたい」と思って、東京の専門学校に進学しました。

石倉 島を出る、という時点でまず大きな決断だと思うんですが?

金田 ええ。最初は島で仕事をしながらオーディションを受けようと思ったんですが、高校1年のとき、担任の先生に相談したら「演技の専門学校に進んでみたら」と勧められて。当初は大阪の専門学校に行こうとも考えたんですが、卒業後のことを考えたら東京のほうが良さそうだなと思って、それで東京の専門学校に進みました。

石倉 おうちの方の反応はどうだったんですか? びっくりされました?

金田 そうですね、でも最終的には応援してくれました。今回の「あゆみ」も、多分両方の回を観に来るんじゃないかな? と(笑)。

端田 それはそうでしょう! がんばろう!!

全員 (笑)。 

石倉 そういえばなんですけど、客演の金田さんから見て、ままごとのクリエーションってどう見えていますか?

金田 アットホームな感じがします。みんなで1つの作品を作る、という作り方が初めてで……。これまでは演出家に演技を見てもらって、動きをつけてもらうというやり方が多かったのですが、ままごとはそうではなく、みんなで作品を作ろうというのが良いなと思います。

それぞれが思う、「あゆみ」の面白さとは?

──歩いた距離に準えたストーリー展開、1つの役を複数の俳優が演じつなぐ演出面の挑戦など、「あゆみ」にはさまざまな面白さがあると思いますが、皆さんそれぞれが感じる「あゆみ」の面白さはどんな部分でしょうか?

金田 大抵の作品では1人1役だけど、1役を3人でやるというのはやっぱり面白いですね。また今回上演される体育館は、実は私が学生時代に体育館として使っていた場所なんです。今回そこへ、俳優として戻ってきて演じることができるというのは、個人的に面白いことだなと思っています。

石倉 僕は最近、“可能性”について考えていて。あゆみや未紀や女が、“私”や“誰か”である“可能性”について。だから面白いなと思うのは、戯曲では登場人物がすべて女性なんだけど、僕の身体によってそれが演じられることとか、1つの役が複数の人によって演じられることとか。それらを単一化しないことに面白みを感じていますし、そういうやり方は今のままごとの態度ととても相性がいいように思います。さらに今回は、自分が生まれた場所ではない小豆島でこの作品が上演されるということで、たくさんのレイヤーが重なって見えてくるのではないかというのも僕にとっては楽しみです。

小山 今回の稽古で、“距離”の話がよく出てくるのが面白いなと思っていて。短編「あゆみ」の物語には、東京ではない場所で育ったあゆみと未紀、そして女が登場します。女は、大人になって上京し東京で働きながら生活をしている未紀の役割を担っています。劇中では、あゆみと未紀が共に過ごしていた過去を回想しながら物語が進行するのですが、大人になった未紀(女)が存在している場所は東京です。今回、小豆島出身の金田さんが、女を、小豆島の体育館で演じることで、女にとってのリアルであるはずの東京のほうが実際は距離が遠く、回想のほうが距離が近いという状況や感覚になっているわけですよね。上演する場所や演じ手が変わることでそういった距離の逆転が起きて、それに対する上演のあり方を探りつつ出てきた“距離”というキーワードから、「あゆみ」の作品内に出てくるさまざまな、こちら側と向こう側、その距離感を再発見していくことができて面白いなと私は思っています。

端田 皆さんの話を聞きながら「確かにそうだな」って思ったんですけど……「あゆみ」は若い女性たちを軸にした物語だから、普通は男性の身体であるアシモ(石倉)さんや、中年女性の私はキャスティングされないと思うんですね。でも役を演じつなぐことで私たちのパーソナリティがお客さんとの間で化学反応を起こし、また薫子さんが言ったように場の力も作用することが、作品にとっていい効果として重なってくれれば面白いなって。私たちのアイデンティティが小豆島にないという点でも、さらに不思議な化学変化が起きるのではないかと思ってドキドキしています。そもそも、1つの役を複数の俳優たちが演じるのって、手をつないで宇宙人を呼ぶような変な作業だと思っていて(笑)。どうやったって違うものを1個のものとして見せるのは、すごくセンシティブな作業を繰り返さないと成立しないし、そこが「あゆみ」の楽しさだと思っています。

『あゆみ(短編)』上演会場の池田体育館(撮影:石倉来輝)

瀬戸内国際芸術祭2022『あゆみ(短編)』公演詳細はこちら

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左から端田、金田、小山、石倉

金田八愛子(かねだ・やえこ)
2000年生まれ、香川県小豆島出身。
高校卒業後、上京し俳優の道へ。2020年よりZERO Projectに所属。
主な舞台出演として、『火の風にのって』、『ホッチキス』、『Juliet』、『六畳一間で愛してる』などがある。

石倉来輝(いしくら・りき)
1997年生まれ、東京都出身。
高校を卒業後、フリーランスとして俳優活動を始める。古舘寛治、岡田利規、森栄喜、本谷有希子など多岐にわたる作家との作品創作に参加する傍ら、集団創作を継続的に行うための拠点として、2018年に劇団「ままごと」へ加入。
近年では、映像作品や、発表の形態を問わない創作活動など、活動の範囲を拡張させながら、俳優の枠組みにとらわれない主体的な関わり方で個人/集団のあり様と「場所」について模索している。
瀬戸内国際芸術祭2019 ままごと×康本雅子『芝生男女』に参加。坂手の道なりと、Mokshaのテラスで食べるソーセージサンド、日没に飲むまめまめびーるが好きです。

小山薫子(おやま・かおるこ)
1995年生まれ、東京都出身。
多摩美術大学演劇舞踊デザイン学科卒業。劇団「ままごと」に所属。
2018年、俳優2人による演劇ユニット「humunus」(フムヌス)を結成。環境や空間を構成する物質やその肌理などを、声と身体でうつしとる表現を試みている。​2020年よりユニットとして福島県富岡町と東京との2拠点でリサーチと創作を続けている。humunusの作品として、ツアー演劇『うつほの襞/漂流の景』(2021年-2022年)、上演+展示企画『〈砌と船〉ーうつつ、揺蕩い』(2022年)などがある。

端田新菜(はしだ・にいな)
1977年生まれ、京都府出身。
1997年より「青年団」に所属。2011年より「ままごと」にも所属。2021年より「表現の現場調査団」に参加。
主な舞台出演として、ままごと『わが星』[作・演出:柴幸男]、ロロ『心置きなく屋上で』[作・演出:三浦直之]、など。映画出演として、『ミツコ感覚』[監督:山内ケンジ]、『東京人間喜劇』[監督:深田晃司]、『鍋と友達』[監督:沖田修一]などがある。