はじめまして。お久しぶりです。そして、ただいまです。

　劇作家、演出家、ままごと主宰の柴幸男です。演劇をつくっています。2020年1月、長久手で演劇公演をします。現在は東京に住み、全国で活動をしていますが、僕の演劇活動のルーツは長久手にあります。

　2007年、新卒で入社した会社を辞めて、演劇を再び志して、自分の名前で、はじめて上演したのが長久手で開催されていた短編劇コンテスト「劇王」でした。『反復かつ連続』という一人芝居です。がむしゃらにつくったその作品はグランプリをいただき、そして、僕は劇王になりました（そういうルールなのです）。海のモノとも山のモノとも知れない僕を呼んでくれたことを今でも感謝しています。

　翌年、再び長久手の劇王に参加した僕は『あゆみ』という短編作品を上演しました。後に長編化し、全国で再演を繰り返すことになる作品です。この年に僕は劇王の座を逃し「司会者の合戦くん」になります（そういうルールなのです）。それから数年、僕は合戦くんをするためだけに長久手に足を運ぶことになります。年に一度、鎧を身にまとい全国各地の短編演劇を舞台袖から見るのはかなり変で、実は貴重な経験でした。

　そして僕は、2009年に東京で『わが星』という作品を上演します。『わが星』はその年の岸田戯曲賞を受賞することになります。その審査の報告を受ける前日も僕は長久手の舞台の上で合戦くんをやっていました。正直、他人の芝居を司会している心地ではありませんでしたが、自分の活動のルーツとも言える場所でその時を待っていたのは今になって思えば運命的な状況でした。

　その後「劇天」という劇王10周年のイベントで再び僕は長久手で公演。このときは二人芝居でした。今までの自分の作風と少し違う挑戦的な会話劇。今まで劇王で見てきたものを詰め込んだような作品だったと思います。その作品で見事に「劇天」になることができました（そういうルールなのです）。

　それから、もう7年。久しぶりに長久手で作品を上演します。はじめての、ままごとの、長編作品の公演です。しかも、はじめて長久手に来た時から憧れていた森のホールでの公演です。僕の劇を上演するには贅沢すぎる空間ですが、今の身の丈に合わせて使わせてもらおうと思います。

　『ツアー』は、全国で再演を繰り返してきた、45分の中編です。『タワー』は、その形式を引き継いで作られる、新作です。長久手での公演が初演になります。この作品も長久手から全国へと旅していきたいと思っています。

　長久手での公演は実家に帰るような心地です。何が変わり、何が変わらないか。新しい人たちに僕の劇はどう見えるのか。今から楽しみです。あらためてよろしくお願いします。